卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

フラダンスは心疾患を予防する

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年の瀬となり、寒さが一段と増したように思います。この時期、心筋梗塞による死亡率が上昇します。特に血圧が高い方は要注意です。暖かい屋内から、寒い屋外に出ることで、血圧が急激に上昇して心臓に負担がかかり心筋梗塞を発症しやすくなります。高血圧治療ガイドライン2019では、非薬物療法として、減塩を中心とした食事療法、運動、アルコール制限、肥満の改善が推奨されています。今回は、運動の1つとして、ハワイの伝統文化であるフラダンスの降圧効果および心疾患の予防効果を検証した研究をご紹介します。

Keawe. J.らは、血圧コントロールが不良(収縮期血圧≧140mmHg、糖尿病の場合は収縮期血圧≧130mmHg)であるネイティブハワイアン263名を対象として6カ月間の介入研究を実施しました。参加者全員に心疾患に関する教育が実施され、フラダンスの教室に通うフラダンス群131名と教育のみのコントロール群132名にランダムに分けられました。6か月後、フラダンス群は80%、コントロール群は85%が継続しました。フラダンス群はコントロール群と比較して、収縮期血圧(-15.3mmHg vs -11.8mmHg)および拡張期血圧(-6.4mmHg vs -2.6mmHg)が有意に改善しました(p <.05)。また、フラダンス群はコントロール群と比較して、有意に血圧分類(<140/90mmHg、<135/85mmHg、<130/80mmHg)が<130/80mmHg(43% vs 21%)に改善しました(p <.001)。10年間の冠動脈疾患の発症を予測するフラミンガムリスクスコアにおいては、フラダンス群はコントロール群と比較して、有意に改善されていました(2.8%, 95%CI: -4.1, -1.4)。さらに、フラダンスによる全ての改善効果は1年間維持されていました。

フラダンスは、リラックス効果、ウエストの引き締め効果以外にも、幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンの分泌量をあげる効果、乳がん患者の生存率を高める効果が報告されています。フラダンスをしている友人によると、ある閉経女性がフラダンスを始めて月経が再開したそうです。女性ホルモンが上昇したのかもしれませんね。今後のフラダンスの生理的効果の実証研究を期待したいと思います。フラダンスは真夏のイメージのダンスですが、血圧が高くなるこの時期、室内でも気軽にできるフラダンスは、もっとも推奨される運動の1つかもしれません。

Keawe J, Kaholokula  aimoku, Look M, et al. A Cultural Dance Program Improves Hypertension Control and Cardiovascular Disease Risk in Native Hawaiians: A Randomized Controlled Trial on behalf of the Kā-HOLO Project. 2021; 55(10):1006-1018. doi:10.1093/abm/kaaa127