卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

部下への信頼がチームを強くする

新年度になり、新しい職場で仕事を始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。では、あなたはどのような上司を求めますか。WBCで一躍、時の人となった栗山監督は指導者のイメージを一新させたと言われています。選手を信じる姿勢がどれだけチームを強くしたか、日本人の多くが目の当たりにしました。今日は、上司の部下に対する信頼がチーム力を高めるという論文をご紹介したいと思います。

Chiuらは、台湾の様々な業種の110の企業に調査への参加を依頼しました。最終的に、71チーム471名が調査に参加しました。部下の回答率は68.97%で、そのうち72.75%が男性、平均年齢は33.61歳、平均して3.07年チームに所属していました。上司の回答率は70.03%で、そのうち70.42%が男性、平均年齢は42.34歳、平均して4.6年チームに所属していました。部下は、上司から信頼を得ていると感じる程度について信頼認知尺度に回答し、上司は、管理者から信頼を得ていると感じる程度について信頼認知尺度に回答しました。さらに、上司は部下の協力姿勢を評価しました。性別、年齢、グループの所属機関、チームの規模はコントロールされ、その影響は排除されました。その結果、管理者から信頼されているという認知は、上司から信頼されているという認知を介して間接的にチームの協力姿勢に影響していました。さらに、上司からの信頼感とチームの協力姿勢の関連性は、チームが小さいほど強い正の関連性がみられ、チームが大きいほど弱い正の関連性がみられました。

著者らは、部下への信頼の連鎖が最終的にチームの協力体制に影響することを示しました。結論では、信頼は組織マネジメントにおける重要なリーダーシップ特性であり、部下が信頼されていると感じるためには、上司は、委任と権限委譲、参加型意思決定、尊敬をもって傾聴することを挙げています。日本は、まだまだ縦社会です。管理者や上司は、部下の失敗につい目が行きがちです。間違ったことを注意して、叱責することが自分の役割だと思っている方が多いように思います。しかしながら、今回の栗山監督は、そのような日本の社会の常識を覆したのではないかと思います。意識して、部下の良いところを観察する、仕事を信頼して任せる、そのような職場環境を構築できれば、チームとして、企業として大きく成長できるのだと思います。

Chiu HC, Chiang PH. A trickle-down effect of subordinates’ felt trust. Pers Rev. 2019;48(4):957-976. doi:10.1108/PR-01-2018-0036