卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

ナッツは健康に良い?

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ナッツを食べる習慣はありますか?食物繊維、蛋白質、ビタミン、ミネラルが豊富で健康に良いイメージもありますが、一方で脂肪を多く含む高カロリー食品としてのイメージも根強いですね。糖尿病の方が次のようなお話をされました。「血糖値が上がったのはアーモンドを毎晩食べすぎたせいなんです。」あなたはどう思いますか?

Jenkinsらは、糖尿病患者さんを対象として、炭水化物をミックスナッツに置き換えた場合のHbA1c(1,2カ月の血糖値を反映する検査値)への影響を明らかにするためにランダム化比較試験を行いました。研究は2008年にカナダの大学病院で実施されました。患者さん117名(男性78名、女性39名)は1)ミックスナッツを摂取する群(40名)、2)全粒粉のマフィンを摂取する群(39名)、3)ミックスナッツと全粒粉のマフィンを摂取する群(38名)の3つのグループに分けられました。ミックスナッツまたは全粒粉マフィンを3カ月間摂取してもらい、定期的に血液検査を行いました。検査値の経時的変化を反復測定分散分析を用いて評価しました。その結果、ミックスナッツ摂取群は全粒粉マフィン摂取群よりもHbA1cが0.19%有意に低下しました(p = 0.026)。また心筋梗塞等の動脈硬化性疾患のリスク因子の1つとして知られているアポリポ蛋白Bが0.09g/l有意に減少しました(p = 0.039)。さらに、超悪玉コレステロールと呼ばれる非常に小さく、酸化変性を受けやすいsmall dense LDLも0.35mmol/l有意に低下しました(p = 0.018)。一方で、他の群間において有意差な差は見られませんでした。

実は、ナッツは、今回ご紹介した論文以外でも、心血管疾患や糖尿病の発症リスクの低下、体重減少など多くの健康効果が報告されています。ナッツに含まれる脂肪はオリーブオイルや魚の油と同じ不飽和脂肪酸です。ですので、適度な量を習慣的に摂ることは健康に良いといえます。冒頭の糖尿病の方の血糖値が上がった理由として、ナッツの摂取量が多かったことが考えられます。ミックスナッツの場合、手のひらに1杯くらい、約25gが推奨されています。アーモンドだと150kcalに相当し、20粒から25粒が適切な量といえます。実はこの方は1日40粒のアーモンドを食べていました。ナッツを食べるときは適量を意識して摂取する必要があるようです。また、血圧が高い方は、無塩タイプを選ぶと良いでしょう。素材本来の美味しさにはまってしまうかもしれませんよ。

Jenkins DJA, Kendall CWC, Lamarche B, et al. Nuts as a replacement for carbohydrates in the diabetic diet: a reanalysis of a randomised controlled trial. Diabetologia. 2018;61(8):1734-1747.