卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

ショウガで花粉の季節を乗り切る

今年は、関東を中心として、非常に多くの花粉の飛散が予測されています。すでに、鼻がムズムズしたり、目の痒みが始まった方もいらっしゃるのではないでしょうか。生姜は血行促進効果があることから体を温める代表的な食べ物として、冬に注目されることが多い食品です。しかしながら、中国では「ショウキョウ」と呼ばれ、感冒、胃腸障害、関節炎に効果がある生薬として、1年を通して古くから親しまれてきました。今回は、生姜のアレルギー性鼻炎に対する効果を報告した研究をご紹介します。

Yamprasertらは、18歳から70歳までの耳鼻咽喉科に通院する中等症のアレルギー性鼻炎の患者を対象として、6週間のランダム化二重盲検比較試験を行いました。患者は生姜抽出物125mgを投与する群(N =40)と抗ヒスタミン薬であるロラタジン10mgを投与する群(N = 40)に無作為に分けられました。実験開始時、3週間目、6週間目に有効性および安全性の評価を行ないました。有効性の評価には、鼻水、鼻の痒み、鼻づまり、くしゃみを評価する尺度から構成される鼻症状合計スコア(TNSS: total nasal symptom scores)、推定鼻腔容積、アレルギー性鼻結膜炎QOL調査票(RQLQ: rhinoconjunctivitis quality of life questionnaire)を用いました。8名が離脱したため、72名(90%)のデータを用いて解析を行いました。その結果、TNSSは、生姜エキス投与群およびロラタジン投与群ともに有意に改善し、両群間の効果に有意な差はみられませんでした。推定鼻腔容積は、生姜エキス投与群が6週目に有意に改善し、ロラタジン投与群よりも有意な改善効果がみられました。また、RQLQは、両群ともに3週目に全ての項目で有意な改善を示し、両群間の効果に有意な差はみられませんでした。そこで、両群間の臨床的特徴に差がなくなるように調整をしたところ、TNSSにおいて、生姜エキス投与群はロラタジン投与群よりも優れた改善効果を示しました(0.67 vs 0.57)。推定鼻腔容積は、生姜エキス投与群において左鼻の容積が有意に改善しましたが(p=0.02)、ロラタジン投与群では、改善効果は認められませんでした。RQLQは、両群ともに改善を示しましたが、調整後も両群間に有意な差は認められませでした。

著者らは、生姜エキスには、眠気、脱力感、めまいなどの副作用がみられず、安全性が高いため、抗ヒスタミン薬の代替薬としての使用を提案しています。生姜は、アレルギー性鼻炎以外にもアトピー性皮膚炎など多くのアレルギー性疾患に効果があることが分かってきました。また、生姜には抗酸化作用、抗菌作用、抗炎症作用、肥満の解消、血糖降下作用、抗がん作用、月経困難症の緩和、妊娠中や癌の化学療法中の悪心・嘔吐の軽減など様々な効果が報告されています。生姜は身近な万能薬といえそうです。最近、生姜ココアが流行っていますね。花粉症の方へのバレンタインのプレゼントとして、ぴったりなドリンクといえそうです。

Yamprasert R, Chanvimalueng W, Mukkasombut N, Itharat A. Ginger extract versus Loratadine in the treatment of allergic rhinitis: a randomized controlled trial. BMC Complement Med Ther. 2020;20(1). doi:10.1186/S12906-020-2875-Z