卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

好奇心は創造性を高める?

最近、「もっと知りたい!」と思い、ワクワクした経験はありますか。新しく始めた趣味はありますか。このような好奇心は、主に3つの側面があることが知られています。1つ目は、喜びを伴う探求心、2つ目は、知識を埋めようとする欠落感、3つ目は、新しいものと遭遇時のストレス耐性です。また、好奇心は、時間が経つのを忘れるほど作業に集中、没頭することを意味するフロー状態と高い関連性があることが報告されています。では、好奇心は創造性を高めることができるのでしょうか。

Schutteらは、3つの好奇心とフロー状態、創造性の関連性について調査しました。57名の参加者(女性45名 男性12名、平均年齢35歳)は、オーストラリアのある地域住民に節水を促すプログラムを考案するという課題に取り組みました。好奇心、フロー状態は参加者自身が評価しました。創造性については、考案された節水プログラムを2名の評価者が独立して評価を行い、2名の評価者の平均点を創造性の得点としました。その結果、好奇心の3つの全ての側面は、得点が高いほど、フロー状態の得点は高くなり、有意な関連性を示しました。また、フロー状態の得点が高いほど、創造性も高くなり、有意な関連性を示しました。先行研究に反して、好奇心と創造性は、直接的な有意な関連性は見られませんでした。しかしながら、フロー状態を媒介する間接モデルでは、好奇心の3つの全ての側面と創造性の得点は有意な関連性を示しました。著者らは、好奇心と創造性の関連性については、さらなる研究が必要であり、議論の余地が残ることを述べています。

好奇心が高いほど、フロー状態になりやすく、高い創造性を発揮することができるようです。好奇心と関連する要素として、その他にも幸福感(weii-being)、知的能力、計算処理能力知られており、さらに認知症を予防することも報告されています。社会活動は、コロナ前の状態に戻りつつあり、新しいことにも積極的にチャレンジしやすくなりました。何気ない日常の中に、少しでも心が躍るものを見つけたら、ぜひそれに集中してみてください。新しい世界が開けるチャンスかもしれません。

Schutte N, Malouff J. Connections between curiosity, flow and creativity. Personality and Individual Differences. 2020, 152, 109555.