卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

ウォーキングは認知症に効果がある!?

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普段歩いていますか?ウォーキングは健康に良い。なんとなく分かる、以前テレビで何かに良いと言ってたな、何だったかな、生活習慣病に良さそうだな、といったところでしょうか。そこで、先述の認知症との関連を報告したJAMAの論文をご紹介したいと思います。

Abbottらは、低強度の身体活動であるウォーキングが認知症と関連があるかどうかについて、1991年から1993年に実施されたthe Honolulu-Asia Aging Study の男性参加者を対象としてして前向きコホート研究を行いました。対象者の71歳から93歳の3734名の男性のうち、身体能力がある2257名を対象として追跡調査を行いました。認知症のスクリーニングツールとしてthe Cognitive Abilities Screening instrumentCASI)が使用されました。1日の歩行距離が長い人は、年齢はより若く、身体能力が高く、高学歴、心疾患を有している傾向がありました。最終的に158名が認知症の診断を受けました(15.6/1000 person-years)。年齢で調整した場合、ほとんど歩かない人(10.4km未満)は、1日に3.2km以上歩く人に比べて1.8倍以上の認知症リスクを示しました(17.8 vs 10.3/1000 person-years; relative hazard 1.77; 95%CI 1.04-3.01)。また1日に0.4kmから3.2km歩く人も、1日に3.2km以上歩く人と比較すると、有意に高い認知症リスクを示しました(17.6 vs 10.3/1000 person-years; relative hazard 1.71; 95%CI 1.02-2.86)。今回は男性だけを対象としていますが、女性でも同様の結果が得られるだろうと考察されています。

研究者の方でウォーキング、ランニングをされている方がとても多いように思います。ある教授は毎日1時間ほどかけて歩いて帰宅されてました。飲み会があれば、飲み会のあと歩き始めます。京都大学の山中先生も時間を見つけてはランニングをされているとか。歩きながらいいアイデアが浮かぶというのも何か根拠があるのかもしれません。リズミカルな身体活動であるウォーキングはセロトニンの放出にも関与していますので、抑うつ感の軽減にもつながります。紅葉の季節を機にウォーキングを日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

Robert D. Abbott, Lon R. White, G. Webster Ross, Kamal H. Masaki, J. David Curb, Helen Petrovitch. Waking and Dementia in Physically Capable Elderly Men. JAMA. 2004:292(12); 1447-1453.