温かいコーヒーは信頼感を高める！？

初対面の人と飲み物を飲むとき，温かいコーヒーと冷たいコーヒーのどちらを選びますか？「抱き癖がつく」という言葉がありますが，必ずしも悪いものではないようです。愛着研究において，乳幼児期の身体的なぬくもりの経験は，大人になって他者と信頼関係を構築する上で重要であると言われています。今回は，身体的に温かさを感じると，相手に対する信頼感が高まるというScienceの論文をご紹介します。

WilliamsとBarghは，意識しているか意識していないかに関わらず，身体的な温かさが心理的な温かさを高めるという仮説をたて２つの研究を行いました。最初の研究では，被験者に温かいコーヒーカップと冷たいコーヒーカップを持ってもらい，目の前の人の印象を１点（冷たい）から７点（温かい）で評価してもらいました。その結果，温かいコーヒーを持った人は（平均 4.71点），冷たいコーヒーをもった人（平均 4.25点）に比べて，有意に高い得点を示しました（p = 0.05）。次の研究では，被験者に治療用のパッド（温かい vs 冷たい）を持ってもらい，その温かさまたは冷たさを評価した後，飲料水またはアイスクリームショップのギフト券を友人への贈り物とするのか，自分自身への報酬とするのかを選んでもらいました。その結果，贈り物の種類に関わらず（飲料水またはギフト券），冷たいパッドを持った人は，       自分自身への報酬を選んだ割合が75%，友人へのギフト券を選んだ割合が25%，温かいパッドを持った人は，自分自身への報酬を選んだ割合が46%，友人へのギフト券を選んだ割合が54%でした。

対人関係における心理的温かさとは，社会認知学によると，他者への親切心，思いやり，信頼価値などを包括しています。実は，最近の脳科学研究において，身体的温かさと心理的温かさを司る脳領域が同じであることが分かってきました。温かいコーヒーを飲むだけで，目の前の人に対する信頼感が高まる可能性があるということです。初対面の人と会うときは，ぜひ温かい飲み物をお選び下さい。

Williams LE, Bargh JA. Experiencing physical warmth promotes interpersonal warmth. Science. 2008:322;606-607.