卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

睡眠薬は休薬できる!?

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sleeping dog


日本睡眠学会は,睡眠薬の休薬方法として,次の4つを挙げています。

1.漸減療法
2.認知行動療法
3.補助薬物療法
4.心理的サポート

そこで,今回は漸減療法と認知行動療法の休薬効果を報告した研究をJournal of Clinical Psychiatry.からご紹介します。Morin C.M. (2004)は,慢性的な睡眠障害があり,ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を長期間使用している(平均19.3年)高齢者77名を対象とした10週間の介入研究を行いました。対象者は,漸減療法だけを実施するグループ,認知行動療法だけを実施するグループ,両方を実施するグループに分けられました。

その結果,いずれのグループも睡眠薬の使用量と使用頻度が共に低下しました。漸減療法と認知行動療法の両方を実施したグループは(85%),漸減療法だけを実施したグループ(48%)および認知行動療法だけを実施したグループ(54%)よりも多くの参加者が睡眠障害の改善を示しました。

筆者らは,認知行動療法の効果として,漸減療法実施時に生じやすい睡眠の中断が減少したこと,不安の増幅が軽減されことを挙げています。

この研究の認知行動療法群では”sleep restriction therapy”が実施されています。日本語では「睡眠制限療法」と訳されます。これは眠るときだけ布団に入るというものです。布団の中で本を読むこと,テレビを見ること,携帯を見ることを避ける、布団に入ってから15-20分眠れなかったら布団から出る,その後に眠気を感じたら布団に入る,というものです。

睡眠薬がないと眠れない方も多いのではないでしょうか。一度試してみて下さい。睡眠薬に依存し過ぎることなく、上手に付き合う方法が見つかるかもしれません。


Morin CM. Cognitive-behavioral approaches to the treatment of insomnia. Journal of Clinical Psychiatry. 2004: 65; 33-40.