感情をコントロールすることの意味
人間は感情の生き物です。どんなときでも冷静に対応したいものですが、なかなかコントロールできないというのが本音ではないでしょうか。母親の感情は、そのまま子供に影響します。母親の感情が不安定な場合は、子供の感情もまた不安定です。では、感情をコントロールすることはどのような意味があるのでしょうか。今回は癌患者さんのdistress(苦悩、不安、悲嘆)とストレスを跳ね返す力とされるresilience(レジリエンス、回復力、復元力)の媒介因子としてemotion regulation(感情制御、感情コントロール)が機能していることを示したPsycho-Oncologyの論文をご紹介します。
この論文で使用されたDERSの下位尺度は、“difficulty with awareness(気づくことの難しさ)”,”difficulty with emotion clarity(明確にすることの難しさ)”“nonacceptance(受け入れ難さ)”“difficulty with strategies(対処の難しさ)”“impulsiveness(衝動性)”“difficulty with goals(やるべきことを遂行することの難しさ)”の6個から構成されています。これらは、感情にとらわれたとき、とらわれそうになったとき、いかにその感情に対処するのかのヒントが示されています。例えば、“difficulty with awareness”を考えてみましょう。近頃、自分の感情が分からない人が多いといいます。そもそも、そこにあると気づいていないものから、離れることはできません。何か、もやもやしたものを感じた時に、そのもやもやしたものが何なのか、まずは自分の感情を注視し、言語化することから始めてみてください。もしかしたら、自分でも気づいていなかった感情に出会うかもしれません。
Vaughan E, Koczwara B, Kemp E, Freytag C, Tan W, and Beatty L. Exploring emotion regulation as a mediator of the relationship between resilience and distress in cancer. Psycho-Oncology. 2019;28(7):1506-1512.