卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

FODMAP食品

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healthy food


お腹が張りやすい、ガスがたまりやすい、下痢をしやすいといったお腹の不調を抱えている方も多いと思います。もしかしたらヨーグルト、納豆、ごぼう、大豆、人工甘味料など一般的に健康によいとされる食品の摂り過ぎが原因かも知れません。

日本では、まだ認知度が低いようですが、胃腸の不快を引き起こす食品としてFODMAP食品が知られています。FODMAPとは、fermentable(発酵性の)、oligosaccharides(オリゴ糖)、disaccharides(二糖類)、monosaccharides(単糖類),and polyols(ポリオール)の略です。高FODMAP食品に含まれているこれらの糖類は腸で吸収されにくいため、腸内細菌により発酵されてガスを発生したり、腸の粘膜に直接作用して下痢を引き起こしたりすることがあります。今回はGutの論文をご紹介します。

Mclntosh Kらは(2017)、過敏性腸症候群IBS)の40名の被験者をランダムに2つのグループに分けて、低FODMAP食品を摂取する群と高FODMAP食品を摂取する群として3週間の介入研究を実施しました。IBS symptom severity scoring (IBS-SSS)を用いて評価を行いました。その結果、低FODMAP群は19名、高FODMAP群は18名が最後まで実験に参加し、低FODMAP群はIBS-SSSが有意に低下していましたが(p<0.001)、高FODMAP群でスコアの低下はみられませんでした。このことから低FODMAP食品の治療法としての有効性を支持しています。また、低FODMAP群は免疫と関連するヒスタミンの尿中の測定量が急激に低下しており、ヒスタミンがなんらかの重要な役割をしている可能性を指摘しています。一方で、腸内細菌として放線菌が増加しており、これは好ましい腸内細菌とは言えず、今後の長期的な観察が必要であると考察しています。

通常、過敏性腸症候群IBS)の方の治療法の1つとして高FODMAP食品を回避する低FODMAP食品が推奨されます。しかしながら、日本人を含むアジア人は、牛乳を飲んでガスがたまる、下痢をするといった乳糖不耐症の方が多いと言われています。これは牛乳に含まれている二糖類である乳糖を消化する酵素ラクターゼ)の活性が低いことが原因です。このことから考えると、過敏性腸症候群の診断がない場合も、日本人の胃腸症状の改善に高FODMAP食品の回避が有効だと考えるのもとても自然なことなのです。お腹によいとされる食品を摂取しているにも関わらず、胃腸の不快症状が続く方は、もしかしたらFODMAP食品が過剰になっているのかも知れません。一度、日々の食習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

Mclntosh K et al. FODMAPs alter symptoms and the metabolome of patients with IBS: a randomised controlled trial. Gut. 2017:66;1241-1251.