卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

睡眠は肺炎を予防する

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夜はよく眠れていますか。人生の3分の1を占めると言われている睡眠ですが、では人はなぜ睡眠をとる必要があるのでしょう。睡眠は、短すぎても、長すぎても死亡リスクが高いことが知られています。45時間程度の睡眠時間の場合、認知機能の低下、気分の落ち込み、新陳代謝の低下、自律神経の不調と関連することが報告されています。また慢性的な睡眠障害は糖尿病、心疾患、癌などの発症と関連しています。そこで、今回は、看護師を対象として、睡眠と肺炎の発症の関連性を報告した研究をご紹介します。

看護師を対象とした大規模なコホート研究(The Nurses’ Health StudyⅡ)は1989年に開始されました。2001年から2005年の期間に、84,527名中、癌、心疾患、糖尿病、喘息に罹患していない56,953名(3757歳)を解析対象としました。睡眠については、睡眠時間およびその睡眠時間が十分かどうかを尋ねました。肺炎については、2年に1回、罹患の有無を確認し、医師の診断およびレントゲンの検査結果で判定を行いました。解析では、コックス比例ハザードモデルを用いて、相対リスクを算出しました。その結果、年齢、喫煙、飲酒、カフェイン摂取の影響を調整した場合、8時間睡眠の群と比較して、睡眠が6時間の群は1.291.07-1.56)、5時間以下の群は1.531.70-2.23)、9時間以上の群は1.491.12-1.98)、発症リスクが高いことが示されました。また、さらに上記の要因に加え、BMI抑うつ気分、高血圧、いびき、シフト制の職業の影響を調整した場合でも、8時間睡眠の群と比較して、睡眠が6時間の群は1.231.02-1.49)、5時間以下の群は1.531.17-2.01)、9時間以上の群は1.451.09-1.93)と有意性が残り、発症リスクが高いことが示されました。

近年、睡眠に対する関心がますます高まっています。西野先生の「スタンフォード式 最高の睡眠」はベストセラーになりました。生産性の向上を目的として、就業中の仮眠を推奨する企業も増えています。また、昨年、東京には「睡眠カフェ」がオープンして注目を集めました。睡眠の質を高める方法は様々です。太陽の光を浴びる、体を十分に動かす、就寝12時間前に入浴する、寝る前にスマートフォンやテレビを見ない、夜食を摂らない、本を読む、ストレッチをする。毎日実践することを考えると、ストレスにならない習慣であることが大事ですね。ぜひご自身にあった方法を探してみてください。質の高い睡眠が新型コロナに打ち勝つ秘策になることでしょう。

Sanjay R. Patel, Atul Malhotra, Xiang Gao, Frank B. Hu, Mark I. Neuman, Wafaie W. Fawzi. A Prospective Study of Sleep Duration and Pneumonia Risk in Women. Sleep. 2012;35 (1), 97-101.