卒薬のすすめ

心理学で博士号を取得した薬剤師が薬に頼りすぎずに心身の健康を維持する情報を海外の論文に基づいて紹介するブログ

笑うことの大切さ

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laughter


毎回、心身の健康に役立つテーマを決めて、海外の論文を紹介しながら考えてみたいと思います。

最初のテーマは「笑い」。先日、ある学会で「笑いと医療」を拝聴し、90分間ずっと笑い続けました。笑いはリウマチ、糖尿病、脳卒中、心疾患、口腔環境だけでなく、収入にも影響するらしいのです。

英語では「laughter」。Martin R. 博士は、笑い(正確にはhumor)が健康に影響する4つのメカニズムを提唱しています(Martin R., 2002; Martin R., 2004)。

1つ目は、生理学的変化。
筋弛緩作用、呼吸器官の改善、循環器官の強化、エンドルフィンの増加、ストレスホルモンの減少。

2つ目は、ポジティブ感情。
痛みの耐性、免疫力の強化。ネガティブ感情から心臓への負荷の軽減。

3つ目は、コーピング。
ストレスコーピングとしてhumorを使用することで間接的なストレス反応の緩和。

4つ目は、ソーシャルサポート。
ソーシャルサポートによる間接的な健康への影響。

最近の日本の研究では、東京大学の近藤教授らが高齢者を対象とした横断研究で、笑いが少ない場合、心疾患の罹患が高いことを報告しています(Hayashi K., 2016)。

「笑い」の健康効果は、古代ギリシャアメリカの先住民にも認知されていました。古くて新しい、そして実は重要なテーマなのです。

1日中笑うこともなく、仏頂面で過ごす日はないですか。「いや、笑えるものが何もない。」そう思いませんでしたか?笑いは、与えられるものではなく、日常の中に見つけるものなのです。そして、笑いの後はすがすがしい気持ちに満たされます。一度、笑いを見つける日々に挑戦してみてはいかがでしょう。

Martin R. Is laughter the best medicine? Humor, laughter, and physical health.Current Directions in Psychological Science. 2002:11;217-219.

Martin R. Sense of humor and physical health: Theoretical issues, recent findings and future directions. Humor: International Journal of Humor Research. 2004:17;1-19.

Hayashi K, Kawachi I, ..Kondo N. Laughter is the Best Medicine? A Cross-Sectional Study of Cardiovascular Disease Among Older Japanese Adults. Journal of Epidemiology. 2016:26(10);546-552